I wanna be your only lover
なんで?
なんでタクさんが家に?
いやいや待てよ、何か貸してた物を返しにきたとか!
…何も貸してない。
あっ、むしろ何か貸してくれるとか?
…なんでだよ、何もリクエストしてないよ。
こんな具合でテンパっていると、
もう一度チャイムが鳴った。
早く開けろってことか?
あわててドアを開けた。
するとタクさんはなぜか息がきれてぜえぜえいっている。
「ど、どうしたんですか…?」
盛大なため息の後、タクさんは言った。
「美生ちゃんこそ、どうしたの?淳に頭痛くて帰ったって聞いたけど…」
状況が読み取れない。
それでなんでタクさんが来るの…?
不安げに目が揺らいだ。
それを見て取ったタクさんが優しい声で言う。
「薬買ってきたから、飲みな。無理すんなよ。じゃあまた今度ね」
タクさんはくるりと向きを変えてドアノブに手をかける。
気づいたら、あたしはタクさんの袖を掴んでいた。
…これが、あたしの最初の過ちだった。