I wanna be your only lover

「おじゃましま―す…」

なんとなく控えめ目にそう言って、

タクちゃんは玄関に入る。

続けてあたしも玄関に入り、カギを閉めた。

ふと、振り返ったタクちゃんが言った。

「美生、抱きしめてもいい?」

突然のことに照れるあたし。

顔が絶対真っ赤だと思いながらこくんとうなずく。

するとタクちゃんはすごく嬉しそうに、ちょっとはにかみながらあたしを見下ろして、

ぎゅっと抱きしめた。

まるで、壊れものを抱きしめているみたいに優しく、

でも二度と離せなくなるんじゃないかっていうくらい力強く。

タクちゃんの香りがする。

そういえば、

“タクさん”の香りはどんなだったっけ。

“タクさん”はどんなふうにあたしを抱きしめたんだっけ。

―――心臓が、どくんといった。


『ダメだよ』


頭の中で誰かがそう囁く。


何かを振り切るみたいにあたしはタクちゃんをぎゅっと抱きしめた。

「久しぶり、タクちゃん、会いたかったよ」











真っ赤に染まった、ずるいずるいあたしの嘘。
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