I wanna be your only lover
キャンプは小さい頃家族と行ったきりだったから、
久しぶりのアウトドアですごく楽しい。
内容が結構奇抜だけど…
到着して落ち着いた頃に、
まずメンバーの男子が2つのチームに分かれてサッカーの試合をした。
しかしただのサッカーではない。
点を入れられたチーム全員が、日本酒を一杯飲まされるという恐ろしい(?)ルールつきだ。
女子は応援なので気楽なものだけど、
試合をしている男子は戦々恐々としていた。
試合開始からわずか30分たらずで、男子のほとんどがへべれけだ。
ふらふらでサッカーボールを蹴る姿はなんだか笑えた。
「お疲れさま―!」
結局みんなへべれけで勝敗もわからない試合だったが、
とりあえず水を差し出す。
「おー、サンキュー!」
あたしのコップを受け取ったのは、
タクさんだった。
タクさんも例外なくふらふらで、
あたしとわかって紙コップを取ったのかはわからないけれど、
それでもドキドキしてしまうあたしの勝手な心臓。
少しは持ち主の気持ちを汲んでほしい…
「だーっ、疲れたぁ!」
そう言ってタクさんは芝生に倒れ込む。
「だ、大丈夫ですか!?」
あたしはあわてて駆け寄って、
大の字になったタクさんの傍らにしゃがみこんだ。
「お水、もっと飲みます?」
「んー、大丈夫…」
今にも寝そうなタクさん。
男の人を起こすのはちょっと無理なので、
仕方なく隣に座る。
まだ陽は高く、
太陽が輝いている。
芝生を涼しげな風が通り過ぎて、
あたしはタクさんの傍らで、
小さく幸せだと思った。