I wanna be your only lover
キャンプファイヤーの火がくすぶる。
みんな飲みに飲んで、寝てしまう人、トイレに駆け込む人、様々だ。
あたしもたぶん相当に酔っていた。
ふらふらするのはもちろん、
さっきまでの暗い気持ちはどこへやら、
何だか今ならなんでもできちゃいそうだ。
ふわふわとした心地でコテージに向かう。
なんでもできちゃいそうだけど何かするのは明日にしよう。
とにかく眠い…
「美生ちゃん、大丈夫?」
「はーい、大丈夫で―す!!」
声をかけられたが振り向きもせずに陽気に答える。
「ダメだなこりゃ…」
そう聞こえたと思ったら、
誰かに身体を支えられた。
怪訝な顔でその人物を見上げると、
大好きなその人がいた。
「タクさ―ん、ふわふわするよ―」
「あ―はいはいそうね、美生ちゃんのコテージはどこ―?」
あやすように言われてむくれるあたし。
「知らない、タクさんなんかに教えるもんか―!」
困ったように笑うタクさん。
「まったく美生ちゃんかわいいな…そんなんじゃ襲われちまうぞ。ホラ、ちゃんと歩いて」
そう言われた瞬間、ふわふわと心に浮いていた何かが、ずしりと重く沈んだ。
ああ、すきになるって、
苦しいな。
「…タクさん、すきだよ」
「……え?」
「あたしじゃ、だめかなぁ?」
空に満天の星、月はかけ始めたばかりのようだ。
あたしはその空を、忘れることができない。