I wanna be your only lover
…さっきまでの冷静な自分はどこに行ってしまったんだろう。
タクさんがいる。
目の前にいる。
ただそれだけのことなのに、
胸のあたりがきゅっと苦しい。
心臓はなぜかいつも通りの心拍数を刻んでいる。
けれど、
自分が何のためにここに来たのか、なんて、
忘れるには十分すぎるくらい気持ちは溢れていた。
「美生ちゃん…?」
タクさんの声で我にかえる。
ずっと黙っていたから、
沈黙に耐えきれなくなったのだろうか。
けれどその推測は大いにはずれていた。
「どうした?なんで泣いて…」
泣いて…?
頬に触れると、冷たい指に温かい水滴が伝う。
あたし、泣いてる…
そう気づいたら、もう止めることはできなかった。