透明水彩
「……残念、だが。」
「やっぱり…、」
まぁ、それはわかってはいたんだ。
いくらあたしが狙われる原因を削除したからって、あたしが戻る世界は決まっている。
その世界において、もうすでに両親は殺されているのだから、当然、生き返る訳などありはしない。
だから、それなら。
「……うん、わかった。それなら、さ。今はまだ全然わかんないことだらけだし、頭ん中ぐちゃぐちゃだけど。
…――とりあえずこれから2ヵ月、よろしくお願いします。」
変わるはずのない、過去。
混沌とした現実と事実で押し潰されそうな、気持ち。
不安は間違いなく、言葉に表せないほどあって。
本当は今にも泣き出したいくらい、感情は不安定だけれど。
あたしがいた世界のみんなが無事なら。これ以上、巻き込むことがないのなら。
あたしはしばらく、ここで過ごそう。
それがきっと、今のあたしにとって最善の方法なのだろう。
室内にいるちょっぴり大人びた皆に向け深々と頭を下げれば、雰囲気は一変し、誰からともなく笑みが零れた。
― Chapter.1 * END ―