透明水彩
「俺はここで、万が一戦闘になった場合に備え、隊長として全体の指揮をとらせてもらっている。」
大きなモニターが設置された部屋をあたしに案内しながら、そう言ったケイ。
「美凪の気持ちはわかっていたけど、何も知らないフリして、何もしてあげられないなんて、私は嫌だったの。」
悲しそうに笑い、そう言った藍香。
「美凪はいつも1人で抱えて、悩んで。いつの時代も、相変わらずだ。」
呆れながらもそう言って、昔懐かしく変わらずに、優しくあたしの頭に触れた理人。
そして。
「……ほら、莱。今さらだけど、とりあえず自己紹介くらいしとけっての。」
「……、古矢莱です。」
湊に引きずられ、半強制的にあたしの元へと連れて来られた、古矢莱(ふるや らい)という少年。
相変わらず無表情なその少年は、エメラルドグリーンの瞳にあたしを映し、にこり、ともしないままあたしに軽く頭を下げた。