透明水彩
「ハハッ、バーカ。……っていうか何、ナギのくせして何か悩んでる訳?」
「は?あたしが悩んでちゃダメなの?」
「そりゃあ、似合わねーし。」
けれど相変わらず、湊はあたしをからかうのが楽しいらしく、ウザい口は止まらない。
「あたしはさ、湊と違って超繊細な人間ですから、人並みに悩みの一つや二つはあるっての。」
「はぁ?お前のどこが繊細なんだよ。」
繊細だよ、多分。
少なくても、湊よりはね。
そう言い返そうと思った刹那、カツリ、と止まった聞き慣れた足音に、湊と共にドアの方へと視線を向ける。
「…あ、れ。湊センパイと美凪サンが2人だなんて、珍しい組み合わせですねー。」
するとそこにいたのは、未だ眠そうな目をごしごしと擦る莱。
今現在、あたしの頭の中のほとんどを占めている人物その人…というか、悩みそのものだった。