透明水彩
涙が零れそうになるのを堪えるように、強く唇を噛み締める。
叔父さんの視線が心配そうにあたしを見つめていたけれど、気づかないフリをして視線を落とし、封筒を開けた。
すると中から出てきたのは、便箋2枚に及ぶ手紙。加えて、これだけでは重量にそぐわないと逆さまにしてみた封筒から、ポスン、とベッドの上に落ちた“何か”。
その“何か”を手にとってよく見てみれば、ガーネットのような色をした石が埋め込まれ、それを囲むように薔薇の刻印が施された見覚えの無いリングだった。
「指輪……?」
両親からの贈り物のくせに、明らかにこれは両親の装飾品ではない。お父さんが指輪なんてする訳も無いし、こんなゴツめなデザイン、お母さんの趣味では無いはず。
不思議に思いつつも握りしめたままの手紙の存在を思い出し、何かわかるかもしれないとまずはそれを読むことにした。
ゆっくりと便箋を開けば、見慣れた文字の羅列が目に映る。どうやらお父さんが書いたらしい手紙は、当然ながら言葉を発することなく、無言で淡々と、あたしにあたしが置かれた状況を告げた。