透明水彩
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美凪へ
これを読んでいるということは、
お父さんもお母さんも、もうすで
に美凪の傍にはいないということ
だね。辛く苦しい思いをさせてし
まうこと、本当に申し訳ない。
だが美凪、いつまでもグダグダし
ている訳にはいかないんだ。実は
奴らの本当の狙いは、美凪とこの
手紙に同封したリングにある。
でもお父さん達が傍にいられなく
なった以上、近くでお前を守るこ
とができなくなってしまった。だ
から美凪、そのリングと共に、と
りあえず“安全な世界”へ行きな
さい。お前は今、この世界にいて
はいけない。その手筈は、しっか
り整えてあるからね。
それでな、お父さんの研究室、お
前ならわかるだろう?そこにある
白い箱のような装置、それに入る
だけでいいんだ。あとは自動的に、
お前の身体は“安全な世界”へ送
られるようになっているからね。
いいかい?事態が落ち着くまで、
必ずこの世界から離れなさい。
だいたいのことは正臣に任せてあ
る。だから美凪は、リングを肌身
離さず持ち歩くこと、これだけを
約束してくれたらいい。
信じられないことばかりかもしれ
ないが、今はお前の力になってく
れる人々を信じなさい。いいね?
高瀬 秋臣·優美
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