透明水彩
「ボスが襲撃された。」
朝食前、ケイのそんな言葉で室内は騒然となった。
「怪我の具合は?」
「ああ。幸いたいしたことはねぇらしい。今は第二アジトで療養中だ。」
「そう……」
理人とケイがそんな会話を交わしている傍ら、あたしはただ叔父さんの身を案じる。
たいしたことはない。
第二アジトで療養中……
あたしのせいで、叔父さんが――…
「……あの、ケイ。」
「ああ?何だ美凪。」
「あたし、叔父さんのところに行きたい。」
「………はあぁぁあ?」
考えたあげく、ようやく紡いだ意志に、ケイは信じられないとでも言った表情をあたしに向ける。
でもあたし自身、その行為――あたしが外に出るのが危険だということは、重々理解している。だけどそれ以上にあたしは今、どうしても叔父さんのところへ行きたかった。
自分勝手だけれど、あたし自身の目で叔父さんの様子を確認したかった。