透明水彩

読み終わった直後、今の手紙で状況を理解したかと問われれば、答えは間違いなく“NO”だ。

告げられた事実はあまりにも抽象的で、端的過ぎる。信じなさいと言われたって、何をどう信じればいいのかさえわからない。

あたしとリングが狙われてるって、何で?

“安全な世界”って、何処?

白い箱のような装置って、何?

それで身体が送られる、だなんて、はっきり言って意味がわからない。

お父さんとお母さんがこうなった以上、あたしに何らかの手が及ぶかもっていうのは、まぁ、考えなかった訳ではないけれど。

あまりにも非現実的で信じがたい内容の手紙……。この状況で両親が嘘をついているとは思えないけれど、信憑に欠けている気がしてならない。まぁ現実に、非現実的な事件が起きたのも事実なのだけど。

…――正臣に任せてある。

不意に、頭の中を過ぎった一文。
正臣――叔父さんは、事実をどこまで、何をどう知ってるのだろうと、ゆっくりと視線を向けた。
< 19 / 279 >

この作品をシェア

pagetop