透明水彩
今日だって別に、いつもと何ら変わり無い朝だった。
「いってきまーす。」
「いってらっしゃい。」
家を出る間際、お母さんとそんな普遍的な挨拶を交わして、普通に登校して。
そしてこれまたいつも通りに6限まで授業を受けて、放課後は部活に勤しんだ。
まぁあえて言うなら、急に降り出した雨はちょっと予想外だったかもしれない。
もちろん、天気予報に忠実なあたしが傘なんて持ち歩いている訳もなく、あてにならない天気予報に悪態ついて、びしょ濡れになりながら帰宅した。
…――そう。そこまでは本当に、どこも変哲の無いあたしの日常だったはず。
だからあたしは、玄関を開けてから明らかな異変を感じるまで、この安穏なあたしの人生が一変するだなんてこと、微塵も考えてはいなかった。