透明水彩
「……叔父さんは、何をどこまで知ってるの?」
手紙を握りしめたまま問いかけるあたしに、叔父さんは一瞬躊躇うような表情を浮かべる。それでもなお強く見つめ続けると、諦めたように小さく息を吐いた。
「何を、って程じゃないさ。兄さんと優美さんが何という組織にいたのか、何を研究していたのか、今知っているのはそれだけだ。」
「…――組織? 組織って、何の? それに、研究してたものって……?」
まるで食いつくように矢継ぎ早に質問すれば、叔父さんの視線はゆっくりとあたしを捉えた。そして刹那、まるで諭すように言葉を紡ぎだす。
「…組織名は《ROSA》――イタリア語で“薔薇”という意味だ。そして研究してたものというのが、簡単に言うと“時空の歪み”だよ。」
ROSA(ローザ)―薔薇、時空の歪み……?
「……じゃあ、その組織とこのリングの関係は?」
「組織とリングのことは、今はまだわからない。所詮、俺も部外者だったからね。組織については、そこまで詳しく教えられている訳ではないんだ。だからそれは、これから調べる他無い。」
申し訳なさそうに若干顔を伏せ、叔父さんは自嘲するように小さく笑う。そんな様子を見ながら思考を巡らせていたあたしは、「だが、」と不意に続けられた言葉に耳を傾けた。