透明水彩

「だが、研究については少しだけ聞いたことがある。……兄さんと優美さんが美凪ちゃんに使わせようとしている装置が、2人の研究の賜物であること、それは間違いない。」

「研究の賜物……?っていうか叔父さん、手紙に書かれてるこの装置のこと、知ってるの?」


叔父さんの言葉に触発されたかの如く、手紙の装置についての文面を指差して叔父さんの前に差し出す。数秒その文面と睨み合った後、叔父さんは大きく首を縦に振った。


「あぁ。この装置は間違いなく、兄さん達の研究によって生み出されたものだからね。だから美凪ちゃんは、必ず“安全な世界”へと行くことができる。この世界で理不尽に狙われる心配はない。安心していいよ。」


…――安心、なんてできる訳がないのに。

思わず、そう言いたくなった…否、喉元まで出かかったその言葉を、無理矢理飲み込んだと言った方が正しいのかもしれない。
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