透明水彩
血……
赤い、血……
混乱する、思考。
思い出す、記憶。
またこの感覚があたしを襲う。
それは恐らくもうきっと、永遠に、あたしから離れることはないのだろう。
そんな中、ぽつり、ぽつり――…
あたしに追い打ちをかけるように、冷たい雨が世界を濡らす。
「はぁ……っ、」
理人に促されるまま足を進めていたけれど、ついに限界が来たようで、あたしはその場に座り込んでしまった。
乱れる呼吸を必死に整えようとしても、絶え間無く降り注ぐ雨に、なす術は無くて。
「美凪…?……そうか、雨……」
あたしの異変に気づいた理人も立ち止まり、あたしの顔を覗き込むようにして、その原因の一部を口にする。
どうやらこの世界のあたしも、雨が苦手だったらしい。
まぁ、あたしはあたしなんだから当たり前か、なんて心の端っこで思ったりした。