透明水彩
あたしはこの時代に来てまもなく、雨音で莱に醜態を晒した。
知り合ってまだ数日だったのに、あのとき莱のぬくもりを求めた。
そして莱も今の理人同様、あたしに「大丈夫。」って言ってくれたんだ。
そんな記憶が一瞬よぎり、手負いの莱の安否が気になりだした。
…――莱はちゃんと、無事に第二アジトへと辿り着けたのかな?
…――あたし達みたいに、また襲撃されてない?
そんなことを考えながら、あたしの意識は闇に堕ちた。
◆◆◆
目を覚ますと、見覚えのない天井が目に映る。
そしてかけられていたブランケットに気づき、ゆっくりと上半身を起こすと、クラッと視界が揺れた。
…――ここが、第二アジト……なのかな。
どうやらあのまま、理人に連れて来られたらしい。
ようやく覚醒してきた意識でそう考えていると、隣の部屋から微かに聞こえてくる声。
隣の部屋に続いているらしいドアの方へ視線を向ければ、僅かに開いたドアの隙間から光が差し込んでいた。