透明水彩
ゆっくり寝せられていたベッドから降り、隣の部屋へと足を向ける。
そしてドアの隙間から向こう側を覗き、部屋の様子に目を走らせた。
「……敵のアジトの、位置がようやく掴めたぞ。」
「うっわ。結構ここから近いぜ。ある意味好都合かもしんねーけど、危険じゃね?やっぱり。」
聞こえてくる、ケイと湊の会話……。
壁一面に設置されたモニターには地図のようなものが映され、その中間に青い丸と赤いバツが視認できる。
恐らくそれがこのアジトと敵アジトの位置なのだろうと、勝手に推測した。
そして改めて、その室内を見渡す。湊も理人も藍香も叔父さんも、ここにはいる。ケイだって、ちゃんと無事に到着できたらしく、いつものように皆の先頭に立って行動していた。
…――なのに。
そこには、莱がいない。
おまけに、芽梨ちゃんも。
叔父さんがここにいるんだから、2人は到着しているはずなのに。
嫌なもやもや感がまた、あたしの胸を満たしていく。