透明水彩

「そっか。わかったよ、ありがと。」


藍香に指差された部屋は、やっぱり医務室。
できるだけ静かにドアを押し開けて中に入れば、1番奥、カーテンに囲まれたベッドが見えた。

僅かに開いた隙間から、時折芽梨ちゃんの明るい髪色が見え隠れしている。


「…――莱、本当にもう大丈夫なの?」

「…大丈夫、だってば。だから芽梨も、皆の所行っていいよ。」

「ダメだよっ!あたしが傍にいなきゃ、あの人がまた莱につきまとうじゃん!」


…――あの人。

それは間違いなく、あたしのことだろう。
あたしがこの場にいることを知らずに交わされる会話、思いの外芽梨ちゃんに嫌われていることに、少しだけ胸が痛い。

まぁそんなこと、わかってはいたし、覚悟もしていたけれど。


「……っ、そんな言い方、無いだろ。別に俺は、美凪サンに付き纏われてる訳じゃない。」

「莱は優しいから、そう思おうとしてるだけでしょ!」


それでも、たった少しでも、莱があたしの味方のように反論してくれるのは嬉しかった。
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