透明水彩
「優しいとか、そういう問題じゃ…、」
「もういいじゃん!莱っ!!莱がこんな怪我してるのだって、あの人のせいなんだよ?
もう、あの人のことは放っておきなって。たとえ莱が関わらなくても、あの人には理人さんも藍香ちゃんもいるんだから。」
……確かに、そうだね。
芽梨ちゃんの、言う通り。
たとえ莱があたしの傍から離れても、あたしには理人も藍香も居てくれる。
莱を、あたしに縛り付ける必要なんかないんだ。
「……あたし、莱にこんな傷を負わせたあの人が、許せないの。」
その芽梨ちゃんの言葉を聞いたのを最後に、あたしは医務室を出た。
医務室を出る間際、莱が芽梨ちゃんに反論する声や、出た直後に藍香に何か尋ねられた声が聞こえた気もするけれど、最早、言葉としては認識されなくて。
ただ、結局帰着する考え――やっぱり全て、あたしが悪いのだと。あたしの、せいなのだと。
あたしがこの世界に、来なければよかったんだ。
― Chapter.5 * END ―