透明水彩
早朝。
誰よりも早く起き、身支度を整える。
おそらく、見張り番として誰か1人は起きているはずなので、その人にあたしの行動を悟られないよう、音を殺して出入口までの道を歩む。
ギシリ、と木製の床が軋む度、飛び上がるほど驚いた。
そして難なく出入口へと辿り着き、とりあえず第一関門を突破できたことにほっと胸を撫で下ろす。
踏み出した外にはまた、どんよりとした雲が空一面を覆っていた。
皆に黙ってアジトを抜け出したこと。
また1人、勝手な行動をとってしまっていること。
それらには、確かに罪悪感はある。
けれどそれ以上に、これ以上皆を巻き込みたくない、全てを終わらせたい。
そんな気持ちが強くて、振り返ることなく歩を進めた。