透明水彩
知らないところで、何かをやっていた両親。
それを知らされることもなく、知らないうちに命を狙われていた上、今まで守られながら生きてきた自分自身……
おまけに、こうなることはある程度予測されていた。そう考えると、やっぱりおかしい。普通の家族だったはずなのに、あたし達の間には知らないことが多すぎる。
それなのに今さら、何も知らないまま、あたしが“安全な世界”に行く必要はあるのだろうか。
「…――ねえ、叔父さん。」
「何だい?」
「えーっと、うん。あたし、その訳のわからない世界に、絶対行かなきゃダメなの?」
「何言って……」
あたしの言葉があまりにも予想外だったのか、叔父さんは一瞬目を見開く。
でもそれは本当に一瞬で、次の瞬間にはもう、真剣な視線があたしを射抜いた。
「何でそんなことを言うんだい?兄さんも優美さんも、美凪ちゃんがその世界へ行くことを望んでいるんだぞ。」
望んでいる、か……
未だ十分に理解し得ず、実感さえも湧かない事実。加えて今は亡き両親から望まれているのが、訳のわからない世界へ行くこと、だなんて、おかしすぎて笑えない。