透明水彩
目を覚ませば、目に映ったのは見慣れない天井。
でもそんなことよりまず、不思議に思ったことがあった。
…――何故あたしは生きてるのか、と。
確かにあの時、あたしは死んだはずだった。
それこそ、死を覚悟して怒りのままに燃やし尽くしたはず。
なのに、何故……?
ガチャリ、そんなあたしの思考は、ドアが開く音で中断せざるを得なかった。
ゆっくりと寝せられていたベッドから上半身を起こすと、入室してきた人物と視線が絡む。
「美凪、サン……?」
「莱……?」
目の前にいるのは、間違いなく莱。
怪我が良くなっている様子に、途端に涙が溢れ出す。
止まる気配のない涙に顔を伏せれば、そのまま優しく、莱のぬくもりに包まれた。
「ら、い……っ、」
「ハイハイ。相変わらず泣き虫みたいですね。
……にしても、無事に目覚めてくれて本当に良かったですー。」
莱の手がそっと、あたしの頬に触れる。