透明水彩
数分後、莱によってアジト内の仲間が部屋に集結したけれど、そこにはもう、芽梨ちゃんの姿は無くて。
「…――芽梨ちゃん、は?」
恐る恐る問い掛けたあたしに、苦虫を噛み潰したような顔をして口を開いたのはケイだった。
「芽梨はあの日……、俺と佑稀がお前のところに駆け付ける前、全て白状する手紙を残して、アジトから姿を消した。」
「姿を、消した……?」
「ああ。」
そして紡がれたのは、予想だにしなかった事実。
芽梨ちゃんはここから姿を消した。もう、あたし達のアジトにはいない……。
「どこに行ったか、わからないの?」
「ああ?わかんねぇよ。第一、裏切り者がどうしようが、俺達が知ったことじゃねぇだろ。」
ケイの辛辣な物言いは、もっともなことだと思う。
だって芽梨ちゃんは最初から、ROSAを裏切る前提でROSAに入団してきた。
そして目的のために情報を流し、スパイ行為を働いた。
だからあたし自身、芽梨ちゃんのことをフォローする気はないし、出ていこうが何しようが、あたしには関係ない。