透明水彩
でも、それでも芽梨ちゃんのことが気になってしまうのは、彼女の莱への気持ちは本物だったと思うから。
多少歪んでしまったけれど、好き故に。
振り向いてほしかったからこそ、芽梨ちゃんは……。
「……にしてもナギ。随分のんきに寝てたよな。」
話題を変えようとしたのか、沈黙に包まれかけた室内に湊の声が響く。
あたしの思考も引き戻され、暗かった雰囲気が少し明るくなったような気がした。
「本当だよ、美凪。あと少ししか、一緒に居られないのに。」
けれど、何気なく紡がれた理人の言葉に、ピクリと頬が引き攣る。
あと、少し……
この言葉が意味する事実は、あたしが1番よくわかっているだろう。
元々、最初から期限があっての逃避行だった。
いつかは終わりが来るのが当たり前で、必然。前に叔父さんが言っていた通り、過去は変えられない。
すなわちそれは、あたしが自身の世界へと戻るときがきたということだった。