透明水彩
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トントン、と軽く2回ドアをノックする音に、あたしは例の手紙に落としていた視線を上げた。それとほぼ同時に、かちゃり、とドアが開けられ、僅かなスペースから叔母さんが顔を覗かせる。
「美凪ちゃーん、藤倉君と黒川さんが来てくれたわよ。」
「……理人と藍香が?」
黒川藍香(くろかわ あいか)は、理人同様、あたしの幼なじみだ。あたし達3人で遊ぶことも少なくなかったけれど、両親の事件があってからは、3人で会うのはこれが初めてかもしれない。
ましてや、2人が訪ねて来るなんて。
……まぁそれというのも、あたしがしばらく学校を休んでいたからなんだろうけれど。
「2人とも、美凪ちゃんを心配して来てくれたのよ。今、部屋に通しても大丈夫?」
「…え? あぁ、大丈夫。ごめんね、叔母さん。色々気を遣わせちゃって……」
「美凪ちゃんこそ、そんなこと気にしなくていいのよ。……じゃあ、連れて来るね。」
優しく微笑んだ叔母さんの姿が廊下へと消え、一旦ドアが閉められたのを確認し、手元の手紙を手早く引き出しへとしまう。
別に、理人や藍香に見られて知られること事態は気にしないけれど。この手紙を貰ってから早5日、あたしも十分に理解していない手紙を見たところで、2人には余計心配をかけるだけ。それならわざわざ見せる必要も無い。