透明水彩

「美凪?どうしたの?」

「ううん。藍香、何でもない。
……ただ、あと何日こっちに居られるのかなって。」


突然表情を曇らせたのであろうあたしの顔を覗き込み、心配そうに問い掛けてきた藍香に、引き攣った笑みのまま問い掛ける。

納得したような表情を浮かべた藍香は刹那、切なげな笑みを貼付けてあたしの問いに答えてくれた。


「あぁ。…えっとね、あと2日くらい、かな。」

「2日……」


最初はあんなにも、自分の世界に帰りたいと思っていたのに。どうしてだろう。何で今あたしはこんなにも、ここに残りたいと思っているんだろう。

…――残り、あと2日。

長いと思っていた2ヶ月は、こんなにもあっという間だった。
明後日にはもう、あたしはここには居ない。

それなのにあたしは、7日間も眠り続けていたなんて……。
死ななかったことを幸いと思うべきなんだろうけれど、素直にそうは思えない。
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