灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
6. 儚き光の果て
真夜中の二時。
氷水で絞ったタオルを郷田の
額に乗せる。
応急処置でガーゼの上から
包帯を巻いた右手。
支えながら郷田の部屋の
ベットルームまで運んだ。
今は高熱にうなされている。
時々汗をタオルで拭き取っていた。
自分のせいでこうなったこと。
今更後悔しても意味がない。
その罪滅ぼしではないが、
郷田のそばから離れることは
考えられなかった。
ひたすらタオルを取り替え、
止血した手を見つめている。
“お前を死なせない”と言った。
あの瞳は本気なの…?
あたしは、あんたを信じていいの…?
初めて触れた唇がやけに
色っぽく映ってる。
また、触れたくなってる。
汗で濡れた前髪。
熱い躰。
肩で息をしながら、
時折うわごとであたしを
呼んでる。
そのたびに“此処にいるよ”って
頬に触れて。