灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



多額の借金だけが残り、
数千人に及ぶ社員の生活も
守り抜くことはおろか、
代表取締役である父親の自殺。



あまりにも無責任だと
残されたあたしたち家族は
かなりの批判を受け、
やがて母親もうつ状態になる。



学校だって誰も守ってくれない。
白い目で見られて、
時々石を投げられることもあった。



家に帰ると父親の仏壇の前で
ぶつぶつ何かを言いながら
奇声をあげたり泣き崩れ出す
母親を何度も慰めた。



借金の取り立てみたいに
毎日のように鳴る苦情電話は
線から抜いた。



ポストに入る嫌がらせの手紙は
読まずに毎日捨てた。



引っ越しすることも、
生活を変えることも、
まだ子供だったあたしに
やり通せることじゃなかったし
母親も気が動転してたんだと思う。



ある日、
逃げるように学校から帰ったら。



家中がめちゃくちゃに荒らされていて
奥から母親の奇声が聞こえてきた。



何かあったんだと悟り、
無言で奥の部屋へと走り出した。











< 103 / 300 >

この作品をシェア

pagetop