灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
ドキドキしながら音のする部屋の
ドアを開けた時。
ガッシャーン!と音がして
あたしの肩は飛び上がる。
いつもの狂いじゃないと
判断出来るくらい
あの日の母親はイカレて
しまっていた。
おそらく部屋を荒らしたのも
母親本人だろう。
ドアの隅に立つあたしと
目が合った時、
正直母親の面影は一切
感じなかった。
もはや殺人鬼のような
生のない目つきで睨む。
今でも忘れない、
母親の最後の言葉。
『ゆら、一緒に死んでくれるよね?』
お母さん……
それ間違ってるよ……
あたしたち……
きっとまた笑えるよ……
他に方法がないか
一緒に考えていこうよ……
刃物を振り回す母親。
どんなに叫んだって、ひとつも
母親には届かなかった。
もう、あたしを見てなかったよ……。