灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『アキ…頼むから人参も切って入れて
くれ。』
『いらねーっつってんだろ。』
キッチンから、
今日何度目かのこの会話。
郷田に代わって食事の用意をしている
にも関わらず、
横から小言を言ってきやがる。
味付けは郷田任せだけど、
入れる食材くらい勝手にさせてよ。
『ポトフに人参は不可欠だ!』
『喧嘩売ってんの?邪魔なだけなんだ
よ人参は!』
ギャーギャー言い合った結果。
郷田のお皿にだけ人参の入ったポトフ
が置かれていた。
ご満悦の郷田と不機嫌なあたし。
『まさかアキがここまで人参嫌いだと
はな。』
『まさか郷田がここまで我の強い人間
だとはね。』
憎まれ口を叩いても
美味しそうに口に運ぶ郷田を見て、
怒りもどこかに消えてった。