灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



激しい動悸と共に
ガタガタと震え上がる躰。
またあの症状だ……。



響き渡るサイレンの音。
耳から離れない。
夢なのか…?現実なのか…?
もはや判断力さえ失うくらい
気が動転してる。



居てもたってもいられず、
自分の部屋までよろけながら
身を隠す。



上手く歩けなくて、
震えが止まらなくて、
ベットの脇で膝を抱えた。



あの日の記憶が蘇る。



血だらけの左手を握りしめ
母親を呼び続けた。
涙も声も枯れ果てて
あたしは自分を失った。



残された道も
与えられた現実も
選ぶ権利なんてなかったの……。



どれくらい経ったのかは
わからない。
途切れ途切れに繋がる記憶の欠片を
辿れば、
いつの間にか知らない人間に
囲まれて
あたしは保護されたんだと思う。









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