灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
ガチャガチャという物音で
現実に戻される。
心が凍りついた。
サイレンの音が止んでも
この震えは止まらない。
息を潜めて外の様子を窺う。
手元にあったカッターナイフを
握りしめた。
最悪の事態が思い浮かぶ。
足跡が付いたのかも知れない。
捕まるくらいなら、
あたしはこの場で終わる覚悟だ。
もう、あの場所には戻りたくない。
ガチャリと部屋のドアノブが回る。
震えでナイフを握る手が収集つかない。
暴れる鼓動が神経を尖らせる。
走馬灯のごとく、勢いよく開いた
ドアから見えたのは
銃を構えた警察ではなく、
息を切らせたあの男だった。