灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『気になる?俺のこと。』
『え…?』
コーヒーカップを静かに置いて
また微笑む。
『簡単に言うとホテル経営さ。主に
海外だけど。』
そう言われてもあまりピンとこない。
高級ホテルなんだろうけど…
五つ星とか…?
『なるべく自宅で仕事するから。』
郷田の言葉に顔を上げる。
穏やかな表情を浮かべて頷く。
『俺が抜けても大丈夫なように段取り
はしてある。今回はそうはいかなかっ
たけどな。』
『は…!?』
社長なのに辞めるってこと?
今もまさに部屋着だし。
仕事だと言って家を空けたことは
昨日の一度きりだけ。
だけど、働かずにこれほどの暮らしが
出来るのは
並大抵の稼ぎじゃ無理だし、
現金で一億あれば貯金なんて一体
いくらになるんだ?