灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



郷田自身を拒んだんじゃない。
このまま全てを見せてしまうことの
恐怖感、
一線を越えてしまうことの恐怖感が
あたしを襲う。



心のない人形にならすぐにでも
なれる。
それなりに躰にしみついてる。
だけどあたしは、
心を突然与えられた今、
本来の愛し方を知らない。



『アキ……?』



この躰に付けた無数の傷跡を
見られるのは気が引ける。



『ごめん…。』



左手首を隠す手も微かに震えてる。
今さらだとわかってる。
二度も裸を見られているのに
いざとなると
嫌でも思い出してしまう。



汚かった自分が。



醜かった自分が。



金や薬を手に入れるために
あたしは自分を売ってた。
何の抵抗もなく相手が果てるのを
ひたすら待って
欲しいモノを手に入れて……。



あたしは汚い……



汚い……



愛される資格なんてない










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