灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



膝を抱え頭を振った。
出来れば郷田には知られたくない……
普段はリストバンドやサポーターで
隠してる。



浮き上がった傷跡。
無数の切り傷。
注射針の跡。
こんな躰に欲情するのは
イカレた野郎だけ。



『アキはキレイだよ。』



やめて…そんな瞳で見ないで。
郷田も、どうかしてる。



『二度見した俺が言ってんだ。』



優しく微笑む姿は
落ち着いていて拍子抜けしてしまう。
あたしはまた、あんたの言葉で
闇を打ちひしがれるの…?



『アキ。自分を汚いだなんて思うな。
 それは間違ってる。』



顎を持ち上げられると、嫌でも
視線が絡む。



『汚いと思ってる自分は偽りの自分
 だ。アキ自身が造り上げたウソの
 自分だよ。本当はそんなんじゃ
 ない。』



鼻の奥がツンとして喉が鳴った。



こぼれ落ちた涙の跡にそっと
口付けを落とす。











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