灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
季節は初夏に入り、
部屋から見える桜の木も
葉っぱに生え替わっていた。
毎日流れる音楽も
郷田との会話も距離も
日々の時間も
何も変わるモノはない。
ランドリールームから出て、
部屋に戻る。
クローゼットの前に積んである
段ボール三箱。
以前、ネットで購入したと言って
郷田が勝手にセレクトした服が
定期的に送られてきた。
さすがに拒否したら拗ねちゃったけど
どれも全て名の知れた有名ブランドの
モノでこっちが焦る。
いいモノを着飾りたいわけじゃない。
確かにセンスはいいと思う。
あたしが着こなせないモノは一つも
ないから。
今のあたしを見て選んでくれたんだろ
うけど、何十着も入って届いたら
とうとうクローゼットに入りきらなく
なってしまった。
まぁ、郷田らしいと言えば
郷田らしいんだけど。
本気であのお金をあたしに
使うらしい。