灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『ふざけるな……』
後から後から涙は絶えなくて
震える躰は立っていられなくなった。
崩れ落ちるあたしを
支える腕さえ今は憎い。
抵抗しているうちに突然出だした
咳が止まらなくなって
うずくまるように咳き込んだ。
呼吸が苦しい……
『アキ…!大丈夫か?』
抱きかかえて背中をさする手を
また拒絶した。
『触んないで…!』
『喋んなって!』
『いや……!』
抵抗し続けるあたしを力づくで
抱き寄せる。
そして、
次の瞬間、初めて郷田は
あたしを呼んだ。
『ゆら……!』
抵抗していた躰はピタリと止み、
咳も嘘みたいに止まった。