灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



『ふざけるな……』



後から後から涙は絶えなくて
震える躰は立っていられなくなった。
崩れ落ちるあたしを
支える腕さえ今は憎い。



抵抗しているうちに突然出だした
咳が止まらなくなって
うずくまるように咳き込んだ。
呼吸が苦しい……



『アキ…!大丈夫か?』



抱きかかえて背中をさする手を
また拒絶した。



『触んないで…!』



『喋んなって!』



『いや……!』



抵抗し続けるあたしを力づくで
抱き寄せる。



そして、
次の瞬間、初めて郷田は
あたしを呼んだ。



『ゆら……!』



抵抗していた躰はピタリと止み、
咳も嘘みたいに止まった。










< 156 / 300 >

この作品をシェア

pagetop