灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
~もうひとつの真実~
【郷田 side】
何から話せばいいのか。
ゆらの表情が和らぐたびに、
少しずつ溶け出した心に触れるたびに、
過去なんて関係なくて
今のままでいいんじゃないかって
思えてくる。
全てを敵に回しても、
俺だけが理解していれば……なんて
都合のいいように解釈していた。
でも心のどこかで、
いつか話さなきゃならない日がくる
と感じていたのも事実で……。
ゆら……黙っててごめん。
だけどあの日、あの橋の上でゆらを
見つけた時は生まれて初めて
「運命」というものを目の当たりに
したよ。
もう離さないって心に誓ったんだ。
そうだね、出逢いは五年ほど前に遡る。
ゆらが最初に連れて来られた施設に
俺が居たと言えばびっくりするかな?