灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
俺だって両親なんて居ない。
生まれてすぐ死んだ……とは聞いたけど
真相はよくわからない。
親戚も居なかったらしいからね。
かけおちか何かだろう。
物心ついた頃から施設での生活だった
から、それが当たり前の世界で
何ひとつ疑問などなかった。
それなりに勉強もこなしたし
誰かに反抗することもなく
言われた通りに何もかもやってみせた。
なんせ、心のない人間だったからね。
裏を返せば、単なる臆病者に
すぎなかったけど。
どうやら俺は捨てられたらしいと
悟ってからは余計に愛想を振りまいた。
嫌われてはいけない。
負担がられてはいけない。
周りより何倍も
努力しなければならない。
俺は此処に居る時点ですでに
マイナスのレッテルを貼られている。
成績優秀で非の打ち所がないまでに
自分を造り上げた時、俺に転機が
訪れる。
中学三年生になって間もない頃、
この俺を養子として迎え入れたいと
申し出た夫婦が現れた。