灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



みんなに紹介されることもなく、
誰とも接しないように
たくさんの監視員たちに囲まれて
ゆらは保護されていたね。



おかしいと思った。
新しい仲間には面倒見のいい俺が
ついて色々と世話をするんだけど
声がかからない。



まるで、俺が見たゆらは幻だと
言わんばかりに静かに時は流れる。



だけど館内全てを把握している俺に
ゆらを探すのは容易いこと。
交代で監視員が付いている。
昼間も、食事時も、
隔離されている部屋からは監視員の
声しか聞こえない。



そんな監視員の目を盗んで
部屋の前まで近付けたことがある。
その時初めて、「安西 ゆら」が
名前なんだと知った。



それからずっと、その名前が
インプットされて離れなかった。



ドアからそっと中を覗くと
ベットに座り、外を眺めながら
静かに涙を流していたね。
その横顔が、キレイで儚くて
激しく俺の心を揺さぶった。



声を押し殺して泣く姿を、
小さく震える肩を、
幼いながらも「守りたい」と思った。
出来ることなら救ってやりたい。









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