灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
『お、お前……!』
なだれ込む歪んだ顔に
不敵の笑みをこぼす。
『バイバーイ。』
手をひらひらさせて
あたしはその場を後にした。
リビングらしきテーブルの上に
無造作に置かれた
乾いた札束とキャップ帽。
それを持って飛び出した。
あんなヤツに
監禁されてたまるかっての。
名前も知らない傲慢な男。
睨みつけるような鋭い視線。
全てが気にくわない、
一番嫌いなタイプ。
少し生ぬるい風を
肌で感じながら夜道を急ぐ。
静かに血が騒ぎ出す。
熱くなる躰を持て余し、
更なるカモを誘う。
あたしは立ち止まることを
知らない。
そんなことは誰からも
教わってない。