灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
探偵に気を取られたのか、
足がどいた瞬間に手を持ち上げた。
3つほど小さな破片が
手のひらに突き刺さっている。
『すみません。仕事中ですので。』
予め、施設側から患者に話しかけられ
てもそう答えるように言われていた。
煽るようなことは決してしては
ならない。
『お前、あたし無視してんの?』
端から見ててもわかるくらいに
顔色が変わっていた。
その時。
スタスタと二人の間を割って入り、
俺の前にしゃがみ込んだ影。
乱暴に血の流れる手を取り、
ジーッと見つめてる。
今にも心臓が飛び出そうだ。
ごつごつした俺の手を掴む
華奢な手。
ふわりと匂うシャンプーの香り。
見てはいけない気がして
ずっと顔を伏せてた。
気付くはずなどないのに。
まともに顔が見れない。