灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
タクシーで見送った後、
すぐに帰る気になれず商店街に
踵を返す。
地べたに座り込んでタムロしている
若者たち。
客引きやキャッチセールス。
酔っ払いのサラリーマン。
ロボットのように配るチラシや
ポケットティッシュ。
どこを見渡しても
夜の世界が大きく口を開けて
待ち構えているみたいだ。
全てが雑音と化して灰色がかった世界が
少しだけセピア色に見えた。
この世界の中にゆらが紛れても
俺はその手を引けるだろうか。
暗闇の中から救ってあげれるだろうか。
離れれば離れるほど光を見失う。
ピリリリリ…!
雑音の中で微かに聞こえた着信音。
潤む瞳を拭い
震える指先で通話ボタンを押した。
再び、始まる。
俺たちの世界。
幾度と繰り返す果てのない迷路。