灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
──施設にて火災事故発生。
患者による放火。
同時刻に大場ミホ、安西ゆら脱走。
まるでテレビニュースのように
脳に流れるテロップ。
──消化後、放火したと思われる患者の
遺体発見。この実態の解明に施設側
は追われている模様。
鼓膜に響く声も右から左に流れていく。
何度か名前を呼ばれてハッとし、
返事をした。
建物内は混乱し、野次馬で
辺りは騒然だったらしい。
これも計算…?
放火はおとりなのか。
人混みに紛れて脱走したのか。
ぼんやりはしてられない。
もう施設にゆらは居ない。
行方は追えなかった。
ここまで来て、
再びふりだしに戻されてしまう。
今この時も、どんどん離れてる。
そう思うと気が狂いそうだ……。
火災事故は後にニュースとなったが
脱走については伏せられていた。
きっと今後も公表はしないだろう。
ただ、責任は施設側にある。
警察も人権が絡むため全面的には
動かない。
これはおそらく偶然ではない。
厳密に計算された偽造工作だ。
だとすれば、放火した患者の死も
想定内だったのだろうか。