灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
眠れない夜を重ね、
昼間は叔父の仕事を手伝い
夜はまた車を走らせる。
フロントガラス越しに
行き交う人の群れを見ていた。
何の収穫もない時間を
何時間と過ごす。
数えきれないくらいの人を見ても
何も感じない。
眠らない街の幻想が
確実に俺の心を蝕んでいく。
まるで8つの時の自分だ。
親に捨てられたと悟り、
それでも迎えを待っていた
あの時の自分。
来ない誰かを永遠に待つ時間ほど
苦しいことはない。
諦めるまでに時間もかかった。
あの感情がまた俺を支配する。
膝を抱えて泣いた夜を
今になってまた過ごすなんて……
ハンドルに顔をうずめ
行き場のない想いをねじ伏せる。
張りつめていた糸が切れたように
一気に感情が溢れ出た。
静かに肩を震わせ
手の甲に落ちる涙を拭った。
こんなことで怖じ気付くわけには
いかない。