灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
二人の距離が徐々に縮まってくる。
気付かれないように足音を消して
進む。
どう声をかければいいんだ…?
ずっと頭の中でそんなことを考えて
いた。
間違いなくゆらは俺を警戒するだろう。
ゆらの歩く先に小さな桟橋が
見えてきた。
ジッと見つめていると、
ひょいと身軽に手すりの上に足を
かけて立ち上がる。
体勢を保ちつつ、時にバランスを
崩しかけながら歩く姿を見て、
思わず声が出た。
『オイ。』
反射的にこちらを見たゆらと
視線が重なる。
ただ、泣いたこともあって
少し目を伏せた。
『ダレ…?あんた。』
覚えて…ないよな。
想定内だ。
『まさか自殺でもするつもりか?』
冷静な態度を心がける。
この高鳴りが伝わらないように。