灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



『此処に居ろよ。』



正直な気持ちを言った。
だけどゆらはまだ警戒したまま。
無理もない。
覚えてないんだし。
かといって、もし覚えていたとしても
何ひとつ接点などなかった。



強制手段で服も全部捨てたし
所持金も取り上げた。



『安心しろ。俺がかくまってやる
 から。』



もう独りはおしまいだ。
これから先、何があっても
俺がこの手で
絶対忘れられない人生にしてやる。



お前は俺の、
たったひとつの希望の光。
泣かないで。
もうじき笑えるよ。
信じていてね。



不器用ながらも同じ時を刻むように
なり、ゆら自身の脆い部分を垣間見
ることができた。
その分虚勢を張り、相手を遠ざけよう
とするのも癖付いている。



本当は誰よりも痛みをわかってる。
でも素直になれないだけ。
なり方を忘れただけ。
環境がそうさせたんだろうけど。



だから時間をかけて教えてあげないと。
俺たちだって、人並みに生活を
送っていける。
幸せになれるんだって。










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