灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
9. 静かな共鳴
トクン……トクン……
規則正しい心音は心を穏やかに
してくれる。
温かい腕の中。
あたしは郷田に全てを捧げた。
髪を撫でる大きな手のひら。
潤んだ灰色の瞳。
いつからか、
あたしは郷田とこうなることを
意識し始めていた。
時間の問題なんだと…。
染み込んでくる郷田の想いが
あたしを麻痺させていることに
気付かずにはいられなかった。
滑稽な自分を恨んだ。
醜い自分を見られたくなかったの。
郷田……
あんたは唯一の光をくれた人だから。
異常者だとわかっていながら
ずっとあたしを見ていたの?
あんたの方がよっぽどイカレてるって
思うけど、言葉に出来ない想いが
胸を馳せている。
信じた……?
信じてない……?
わかんない。