灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~
話している相手は男のようだ。
受話器から漏れている。
そして聞こえてきた言葉。
──もうすでに警察は動いてますよ。
公にはしていませんが。
身震いがした。
ミホの死をきっかけに
次々と浮き彫りになっていく事実。
メディアにさらされた以上、
勝手に事件扱いされて警察も
動き出す。
あたしの気配に気付いた郷田は
振り返った。
驚いた様子もなく、
優しくあたしを引き寄せる。
『心配していただいてありがとう
ございます。ですが僕の気持ちは
変わりません。』
──郷田さん…!あなたが諭して
あげるべきだ。
受話器を持ち替えて、深く息を
吸った。
『僕は決めたんです。離れること
はありません。心配しないで
ください。僕たちは大丈夫です。
いつか必ず、日を浴びてみせ
ますよ。』
そこで切られた通話。