灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~



話している相手は男のようだ。
受話器から漏れている。



そして聞こえてきた言葉。



──もうすでに警察は動いてますよ。
  公にはしていませんが。



身震いがした。



ミホの死をきっかけに
次々と浮き彫りになっていく事実。
メディアにさらされた以上、
勝手に事件扱いされて警察も
動き出す。



あたしの気配に気付いた郷田は
振り返った。
驚いた様子もなく、
優しくあたしを引き寄せる。



『心配していただいてありがとう
 ございます。ですが僕の気持ちは
 変わりません。』



──郷田さん…!あなたが諭して
  あげるべきだ。



受話器を持ち替えて、深く息を
吸った。



『僕は決めたんです。離れること
 はありません。心配しないで
 ください。僕たちは大丈夫です。
 いつか必ず、日を浴びてみせ
 ますよ。』



そこで切られた通話。










< 232 / 300 >

この作品をシェア

pagetop